―現場の課題を一緒に解決する中で見えた「スキマバイト」との違い―
札幌通運株式会社は、北海道を拠点に全国へと物流ネットワークを展開する総合物流企業です。倉庫業務から輸送まで幅広く手掛け、確かな実績と高い専門性で地域の物流インフラを支えています。札幌通運様では、専門性の高い袋むき作業にエントリーを導入。最初は3~4名からのスタートでしたが、伊藤支店長が毎週現場に足を運び、スタッフとの信頼関係を築いたことで徐々に拡大しました。その中で誕生したのが「評価制度制度」。努力やスキルが評価され、時給に反映される仕組みはスタッフのやりがいにつながり、生産性の向上にも結びついています。「人を知り、人を育てる」仕組みづくりが、現場を支える大きな力となっています。

本日お話を伺った札幌通運㈱の古林様(写真:左)
北海道出身、休日のリフレッシュは温泉・美味しいご飯を食べる事
北海道のおすすめグルメはジンギスカン
営業担当は弊社札幌支店の伊藤支店長(写真:右)
―まずは、エントリー導入のきっかけからお聞かせいただけますか?
古林さん:当時は“単発派遣”のイメージが強く、うちの現場は専門性が高いため、「誰が来るか分からない単発の派遣では任せられる仕事がないのでは」と考え、しばらく様子を見ていましたそんな中で現在お願いしている袋むき作業※の話が持ち上がり、「この業務ならエントリーさんに依頼できるかもしれない」と思ったのが最初のきっかけです。
他にも営業の方はいらっしゃいましたが、伊藤支店長は特に頻繁に足を運んでくださり、直接お話しする機会が多かった。その積み重ねがあって、自然と記憶に残っていたんです。
※袋むき作業とは:大袋や外装から中身を取り出して仕分けや再梱包を行う作業
―最初にご依頼いただいのはいつ頃で、当初はどれくらいの人数だったんですか?
伊藤:約2年前ですね。最初は3〜4名ほどからスタートしましたが、徐々に拡大して、今では多いときには10名を超えることもあります。
―最初に3名のスタッフさんが来られたとき、印象はいかがでしたか?思い描いていた通りでしたか?
古林さん: 当時はまだ物量が少なかったので、正直、自社の人員だけでも対応できる程度の仕事量でした。ただ、半年後・1年後の計画を考えると確実に増える見込みがあり、先を見据えて早めに手を打つ必要があると感じ、エントリーさんにお願いしました。
ただ最初の課題は、いわゆる“挙手制”の仕組みでした。つまり「3名お願いします」と依頼しても、実際に誰が来るかは分からない。ところが袋むき作業はかなり専門性が求められる業務で、知識や一定の作業スピードがなければ現場が回らない。決して「誰でもできる仕事」ではなかったため、そこをどう乗り越えるかが一番の課題でした。
拡大に伴う新たな課題と“育成”への挑戦
―実際に古林さんから課題の相談を受けたとき、札幌支店としてはどんな対応をされたんですか?
伊藤: まず大前提として、経験を積んだスタッフを育成していく必要がありました。
最初に取り組んだのは「スタッフさんとしっかり信頼関係を築くこと」でした。毎週2回以上は現場に行き、入職対応に加えて、密にコミュニケーションを取るようにしました。その積み重ねでスタッフさんから直接「次もお願いします」と声をかけてもらえるようになり、継続して現場に入ってくれる流れができてきたんです。こうした関係づくりが、課題を解決するための第一歩だったと思います。
古林さん:やはり派遣という仕事は“人を扱う商売”ですから、スタッフを知らなければ成り立ちません。派遣すれば終わり、というものではなく、手間ひまをかけて関係性を築いてこそ、初めて仕事になるんだと思います。
その点は伊藤支店長とも共有しながら、一緒に取り組んできた部分です。
―依頼人数も増えていくほど、見ていかなければならないスタッフや考えるべきことも多くなると思うのですが、新たな課題は生まれたそうですね?
古林さん:はい。最初は5~6名規模でしたが、一気に40名近くまで増えた時期がありました。そのとき課題となったのは「誰がスタッフをコントロールするのか」という点です。社員から人を割くのは難しい状況だったため、「エントリーさんの中で能力の高いスタッフを抜擢し、育成してもらえないか」と考えました。エントリーさん自身がスタッフを育てる環境をつくることが、大きな課題だったんです。
―北海道では、他エリアにあるようなフィールドサポート(現場で点呼や新人レクチャーを行う社員担当)の仕組みがまだなく、当時はどのように対応されたのでしょうか?
古林さん:そうなんです。そこで「うちには優秀なエントリースタッフさんのレギュラーが多いから、この人たちをランク付けして、適切な対価を支払い、教育を担ってもらう仕組みを作ろう」と考えました。エントリーさんとも相談して、今の評価制度が形になったんです。
具体的には、まず新しく入った方や生産性がまだ安定していない方を「Bランク」としてスタートします。一定のスキルやスピードを身につけたら「Aランク」へ昇格。そして、A・Bランクのスタッフを指導できる立場が「Sランク」。さらにすべてを理解し、現場からも信頼されるレベルに到達した人を「SSランク」と位置づけています。
このランクは単なる肩書きではなく、生産性(1時間あたりどのくらい作業ができるか)を全員分数値化し、そのデータをエントリーさんとも共有しながら、昇格の基準としています。
とにかく「やったことがきちんと評価されて、それが給与に反映される」そんな環境を作りたいと思ったのが出発点です。派遣スタッフの皆さんにも、正社員と同じように努力が評価につながる仕組みを整えたい。そうすることで、働く人がやりがいを感じながら続けられる現場を目指しました。
―確かに素晴らしい取り組みですね。 同じ1時間の仕事でもスピードや質には差があります。そうした部分を評価することで、スタッフのやりがいも高まると思いますが、実際の声はいかがですか?
伊藤:当初はランクの下位にいるスタッフさんの中には「人に教えるのはプレッシャー」と感じる方もいましたが、経験を積んで習熟度が上がるにつれてランクも上がり、時給も上がる仕組みになっています。そのため「もっと頑張ろう」という向上心につながり、リピートしてくれる方も増えましたし、生産性も高まりました。
―これまで制度を一緒に作り上げてこられたお話を伺いました。次に、エントリーへのご発注の流れについて教えていただけますか。繁忙期などに合わせて事前に計画を立てていらっしゃるのでしょうか?
古林さん:基本的には、前月もしくは前々月の15日~16日頃に、翌月のシフトを私から伊藤支店長に提出しています。その計画に沿ってスタッフを集めていただく形です。もちろん出荷量には波があるため、「予定より少なかった」「逆に多くなった」といった状況も出てきます。そうした場合はできるだけ早い段階でお伝えし、人数を増やしたり減らしたりと柔軟に調整していただいています。
スピード重視のスキマバイトと、安心を担保するエントリーの違い
―例えば、「明日急に出荷が増えそうだ」といった直前の対応が必要なケースもあると思いますが、その場合はどうされていますか?
古林さん:そのような急な増員が必要なケースについては、別の手段で対応しています。さすがにリードタイムが短すぎてエントリーさんにお願いするのは難しいので、その際は「スキマバイト」などを補助的に活用しています。
今まさに「スキマバイト」も使っていますが、両者には明確な違いがあります。「スキマバイト」はスマホだけで募集から就業までが完結する仕組みなので、人手不足のときにすぐ人を集めたい場面では非常に便利です。ただ、その一方で仲介役が存在せず、誰が来るか分からないというリスクがあります。実際に現場の希望とは合わない人材が来てしまうケースもありました。
一方で、エントリーさんの場合は伊藤支店長をはじめとするコーディネーターが間に入って、事前に適性を見て人選してくださいます。ですから「誰が来るか分からない」という不安がなく、安心して業務を任せられるんです。
私たちとしては、「スキマバイト」は“スピード優先の急な募集”、エントリーさんは“安定した人材供給が必要な場面”というふうに、役割を分けて使い分けています。その中で、伊藤支店長がフィルターとなって適材適所のマッチングをしてくれる点は、本当に助かっています。
―そう言っていただけると本当に励みになります。エントリーとしても「人」に重点を置いてサポートしているので、そう言っていただけるのは一番うれしいですね。そこでお伺いしたいのですが、今後エントリーに期待することやご要望はありますか?
古林さん:正直いま非常に満足していますので「ここを改善してほしい」という点はあまりありません。ただ、派遣会社ごとの“色”というのは、なかなか外からは分かりにくい部分だと思います。下手すると「タイミーと変わらないんじゃないか」と見られてしまうケースもあるのではないでしょうか。
例えば、本州のほうで導入されているFD(フィールドディレクター)のように、専門性の高い現場で「私が先頭に立って教えます、管理します」としっかり体制を示すことができれば、エントリーの強みがさらに伝わると思います。
実際、当社の荷主様の拠点では袋むき作業がどこでも発生していて、本州でもエントリーさんが入られていると聞きます。そこにFDのような役割を担う方が入ってくれたら、企業としては大変ありがたいと思います。弊社でも仙台拠点でエントリーさんにお願いしていますが、まだ規模が小さいので、今後の展開に期待しています。
